お腹が空きました。
お腹がめちゃくちゃ空きました。




牛野が窓の外を細い目で見ながら呟く。

「秋だなぁ。」

「秋ですねぇ。」

すぐそばの紗耶がパソコン画面を見つめたまま答えた。


「松茸かな。」

「私は栗ですかね。」

「いやいややっぱりサンマかな。」

「あの、牛野さんそろそろ邪魔です。堂々とサボらないでくれませんか。」


グサリと由美に釘をさされて、今日も青いネクタイをしめた牛野が困ったように微笑む。

紗耶と由美のディスクの前にのんびりとコーヒー片手に佇む牛野は相変わらず爽やかなイケメンさんだ。

「まぁまぁ。俺一仕事終えて休憩中なの。」

「休憩中なら休憩室に行って下さい。」

「だってあそこ、むさ苦しいじゃん。タバコ臭いしさー。…由美ちゃんなんで今日そんなピリピリしてるの?」

この隅でコーヒーを飲むなんて日常茶飯事なことなのに。

今日はやたらと噛み付いてくる由美に牛野は冷や汗を流した。


「あーー、由美ちゃん今日ややこしい処理に当たってしまって。
締め切りギリギリに継続の依頼があって、マルケイの処理をしたんですけど、締め切り後にやっぱり辞める、って連絡があって…。
この処理難しいんですよね、パソコン的には料金発生してるのに、手入力で訂正入れるとパソコンが誤作動と認識しちゃうんで、そのまた訂正で…発送部には人間が直接連絡入れないといけないし、またその確認作業もだし。
発送部にも渋い顔されるんですよねー、住所のラベルなん万枚から一枚探し出してボツにしてもらわなくちゃだし。こういうもろもろの作業してる間、通常の仕事がまた次々と重なっていくし。」

パソコンを見つめ、カチャカチャ言わせながらボンヤリと喋る紗耶に、牛野は目を丸くする。

部署が違うと途端になんの処理だか見当がつかなくなるのはよくある話だ。

マルケイってなんだ。

「紗耶ちゃんも仕事してるんだね…。」

「?!どういう意味ですかっ。」



「あーっ!もうあのクソオヤジ!
この入金プランでは後払いは無理って何回も説明したのに無理やり送付依頼突きつけて絶対払うって言ったくせにやっぱり中止ってどういうこと⁈」

お怒りモード炸裂の由美に、ケタケタ笑いながら少し上の先輩が話かけた。


「おいおい、お客様をそんなふうにいうもんじゃないよ。そんな、カリカリすんなよな、ちょっと肩の力抜いて行こうゼ。」

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