お腹が空きました。
“この間はありがとうございました。
紗耶さんの事は…、元カノというだけでやっぱりどうしても好きにはなれません。
でも、紗耶さん自身は好きです。
またなにか相談したいときは連絡していいですか?”
そのメモから顔を上げた紗耶に、良介はニコッと笑って答える。
「メアドも載ってるだろ?直接渡すの恥ずかしいんだと。可っ愛いよなぁ。」
デレデレ話す良介に紗耶もうんうんと頷いた。
…優ちゃん、やっぱりなんかいい子。
真面目で正直で一生懸命でなんか可愛い。
「…まぁ、用事はそんだけー。…そっちが噂のヤキモチ焼き屋のイチゴちゃん?おっかねぇのなー。ププっ。じゃあな!」
最後の最後でいたずらっぽくそう言い捨てながら、良介は猛ダッシュで逃げ去って行った。
「…。」
「…おい、あの野郎がなんでアレを知っているのか100文字以内で説明しろ。」
わなわなと震えながら杉崎は良介が消えて行った道の先を見つめる。
杉崎さん、
「お前にもまだ教えた記憶がない…っ、て…。
…何泣いてんだ。」
ぽすりと無言で杉崎の胸におでこをくっつけ、紗耶はまた一つ涙をこぼした。
杉崎さん、
杉崎さん、
「……。」
杉崎さん…っ
「…お、おい…、泣くな。」
「……。」
「紗耶…。」
ほとほと困り果てたように杉崎は紗耶の背中に腕を回す。
紗耶の頭に顎を乗せながら、杉崎は一言、悪かったと呟いた。