お腹が空きました。
声もあげず泣く紗耶を連れて、杉崎は紗耶のアパートに上がる。
紗耶の顔をティッシュでガシガシ拭きながら、杉崎は珍しく眉を八の字にさせた。
「…遅くなったな。」
「…。」
「本当に、悪かった。」
「…。」
顔をぐちょぐちょにしながらただ首を横に振る紗耶に、杉崎は頭をかいて、訪ねる。
「紗耶、なんか言え。お前は…普段どうでもいい事はぺらぺら喋るくせに…。言いたいことがあるなら言え。」
「……っ、」
杉崎に背中をさすられながら、紗耶はグッと意を決したように口を開いた。
「す、杉崎さ…っ」
「なんだ?」
「…携帯はちゃんと携帯して下さいーーーーーっっ!」
ぐわーっと泣きつつ紗耶はぺしぺしと杉崎の胸を叩く。
「うん。悪かった。」
「ぐ…っ、ず…、それからっ牛野さんじゃなくて直接私に連絡下さい!!」
「うん、それも悪かった。…手帳に会社の番号しか記入してなくてだな、…その、悪かった。」
「それからっ、それからっ、名前いつになったら杉崎さんの口から教えてくれるんですかぁ…っ、それ結構楽しみに待ってて…。
後、朝ごはんにセロリのサラダ出すのやめてもらえたら…セロリ…ちょっと苦手です…
後、後っ、…お、おかえりなさい…!ずっ…」
「…ああ、ただいま。」
ギュッと力一杯紗耶を抱きしめながら、杉崎は色々と参ったとばかりに少し笑った。