お腹が空きました。


あーーー、ほんとだ…。


ケーキの手前になんで今まで気が付かなかったのかというほど結構デカい【予約済】の可愛いカードが針金に絡まって立っている。(ついでにご婦人のタックルで若干揺れている。)


…残、念。


「…ごめんなさいね、孫の数だけきっちり頼んどいたから、一個ぐらい余裕あるなら譲ったんだけど…。」


ご婦人はほんのちょっと気の毒そうに紗耶を見つめたが、お会計を済ませてサクッと帰って行った。

そんな後ろ姿をなんとなく見つめながら紗耶は申し訳なさそうに見つめるお姉さんにこれまた申し訳なさそうに微笑んだ。

…帰るか。

店内から背の高い無表情の男性店員が出てきてシャッターを降ろす。

トボトボ歩き出した紗耶とチラッと目が合い、ボソッと彼は呟いた。


「閉店時間、過ぎてるから…」


あ、そうなんだ。


無表情の中に、ほんのちょっとの【申し訳なさ】を、垣間見たような気がして、紗耶はその人にも力無く微笑んだ。










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