お腹が空きました。
温度がちょうどいい、ということは…、この沈黙も結構長く続いていたと言うこと。


紗耶はカップに口をつけながらそろりと杉崎に視線をズラした。



バチっ


鋭い瞳がこちらを見ている。


目が合った瞬間、紗耶は思わずブッとココアを吹きそうになった。


会社で上司のお叱りというのもキツいが、上司のお宅で無言っていうのも結構ツラいものがある。


「…な、なんかいつも飲むココアと全然違いますね!こう、なめらかと言うか、粉っぽくないというか。」

紗耶は無言で見つめ合う事に耐えられなくなり、早口にまくし立てた。


「コツがあるんだよ。…まぁ、秘密だがな。」


秘密ってなんでなんだと思いつつ、紗耶は次の話題を視線の端で探す。


なんかー…っ


なんかーーないかなーーっ話題に出来るようなー…



「室内。」

「ぅ、わ、はいっ。」


明らかにワタワタしている紗耶を杉崎は静かにたしなめて、ゆっくり口を開いた。



「…お前、なんで泣いてたんだ?」











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