お腹が空きました。
そ れ は 聞 い て く れ る な !
紗耶はぐわっと変な汗を掻きながらまた下を向いた。
恥ずかしい。
いまさらだが、上司に泣き顔をみられてしまった。
…主な原因は良介と会ったことだ。
だがしかし。
まさか大の大人がケーキ売り切れが引き金で大泣きしてたなんて言えるわけない。
これだけはなんとしても隠し通さなければ。
ほんとに今思い出してもなんであんな場所で泣いてしまったのか…。
紗耶は更に下を向いた。
「えっと、。」
「……。」
「…いや、まぁ、ちょっと、…。彼氏と別れまして…。」
「別れまして…って、ちょっと前にもう別れてたんだろう?なんで今、あの店の前で泣く必要があるんだ。」
「う…っ。」
え、と紗耶は変な顔をしながらまた固まった。
今日は固まってばっかりだ。
多分今日は肩こりで寝れないと思う。
「やーーー、あの…。実はその別れた彼氏とばったり会いましてですね。その、またばっさりきっちり改めて別れたというか、もやもやの答え合わせをしたというか…」
「店内で?」
「店内?あ、あのケーキ屋さんですか?いえ、隣町のファミレスですよ。あそこは通りがかっただけで。」
きょとんと紗耶が答えると、杉崎は天井の方を見ながら「ふーん。」とゆっくり答えた。