お腹が空きました。


紗耶は懇願にも似た熱っぽい表情で杉崎を見つめた。

「杉崎さん…。」


「な、なんだよ。」


なんだか顔を妙にひきつらせ、杉崎はたじろぐ。



「お、」


お?





「お腹すきました…。」


「…。」



杉崎はハァ…と大きめにため息をつき脱力した。

「お前この前残りのケーキ持って帰っただろうがよ。」


「あんなの土日で消え失せましたよ。」


「昼飯は?」


「何時間経ったと思ってるんですか。」


「何時間だよ。」


「4 時 間 で す !」


「…。」


握り拳を作りそんなことを堂々と訴える紗耶に、杉崎は一瞬動きを止め言葉を探す。


「…。」


しかし、しばらくして何かをあきらめたようにうなだれ、ごそごそとポケットを漁り始めた。


「…これでも食っとけ。」


えっ!と紗耶は瞳を輝かせる。


「手、出せ。」


「はい!」


期待に期待を重ねたように手のひらを突き出し、紗耶は杉崎を見つめた。












< 70 / 324 >

この作品をシェア

pagetop