お腹が空きました。
紗耶は懇願にも似た熱っぽい表情で杉崎を見つめた。
「杉崎さん…。」
「な、なんだよ。」
なんだか顔を妙にひきつらせ、杉崎はたじろぐ。
「お、」
お?
「お腹すきました…。」
「…。」
杉崎はハァ…と大きめにため息をつき脱力した。
「お前この前残りのケーキ持って帰っただろうがよ。」
「あんなの土日で消え失せましたよ。」
「昼飯は?」
「何時間経ったと思ってるんですか。」
「何時間だよ。」
「4 時 間 で す !」
「…。」
握り拳を作りそんなことを堂々と訴える紗耶に、杉崎は一瞬動きを止め言葉を探す。
「…。」
しかし、しばらくして何かをあきらめたようにうなだれ、ごそごそとポケットを漁り始めた。
「…これでも食っとけ。」
えっ!と紗耶は瞳を輝かせる。
「手、出せ。」
「はい!」
期待に期待を重ねたように手のひらを突き出し、紗耶は杉崎を見つめた。