お腹が空きました。
◆
「ほれ、早く乗れ。」
「は、はい。」
内側から腕を伸ばして開けられた助手席に紗耶は乗り込む。
会社の近くの狭い路地で拾われた紗耶は少し緊張しながら座席に腰掛けた。
「途中買い物に寄るぞ。」
「あ、どうぞどうぞっ…」
黒い車を発進させながら、杉崎はチラリと紗耶を見る。
「…お前、何緊張してんだ?この車に乗るの初めてじゃないだろ?」
「や、まー、そうなんですけど…。」
少し下を向きながら紗耶は居心地悪そうに軽く座り直した。
「なんていうんでしょうねぇコレ、街の中でバッタリ担任の先生に遭遇する分には特になんとも思わないんですけど、怪我とかして、いざ学校から先生の車で送って貰うってなったら妙にざわざわするっていうか…」
「訳わかんねぇよ。誰が担任の先生だコラ。」
杉崎は渋い顔をしながらハンドルをきった。