お腹が空きました。
やぁ…だって、ねぇ。。
紗耶は隣に座る杉崎を盗み見た。
この前はそれどころではなかったので気にもとめていなかったが、…
『(鬼軍曹、…車似合うんだもんなーー。)』
不覚にもちょっと格好いいとか思ってしまった自分が嘆かわしい。
いやいやいやいや、と紗耶は首を振って気持ちを切り替える。
仮にも隣にいるのは鬼係長様だ。
妙な事を口走るもんならしばかれかねない。
(“杉崎さん可愛いケーキ作る割に、車運転してる所、男臭くて格好いいですね”とか言ったら走行中に降ろされそう。)
そんな場面を想像して紗耶はぞっとしながら杉崎に質問した。
「そういえばどこに寄るんですか?」
「んあ?」
……
………
「…あ、なるほど、スーパーですか。」
紗耶はスーツ姿で買い物カゴを脇に抱える杉崎を見つめ、もうちょっとででかかった言葉を飲み込んだ。
「(にっあわなーーい。)」
「…お前、今“似合わねー”とか思っただろ。」
なんで分かったんだ。
じとりと睨まれた紗耶はぎこちなく笑いながら手をバタバタさせた。
「まさかまさかー。ハハ。…あ、で、何買うんです?」