お腹が空きました。
亜栗が紹介するように微笑むと、奥の方でずっと言い合いをしていた杉崎がとうとう声を荒げた。
「いい加減にしろよっ俺はもう焼かねぇっていってんだろ!」
「そんな~。」
泣き付くキラキラ王子を振り払い、ぱっと目が合ってしまった紗耶に気まずそうな顔をした杉崎は、かたわらに置いていた自分の鞄をむんずと掴み上げた。
「焼いていけばいいのにーー。」
「うるせぇ。」
亜栗へもそう言い捨て、早足で出て行こうとする杉崎を紗耶は慌てて追いかける。
「すいません、あ、ありがとうございました。」
「ああ、気にしないでね、あの子意地張ってるだけだから。また来てね。」
特に気にした様子もなく、亜栗はニッコリ笑う。
なんだか慣れてるみたいだ。
もう一度ぺこりと頭を下げ、紗耶は扉を閉めた。