お腹が空きました。
◆
「…。」
無言の車内の中、紗耶はかたわらに置かれたミニクーラーボックスを見つめる。
「…。」
…やー、なんか凄まじかったな杉崎家。
「…。」
「…。」
しかし、お茶菓子にケーキ出て来なかったのは何故だろう。
そこはかとなく期待していたんだが(はしたない)、やっぱり毎日みたりしていると普段は食べたくないものなのかな。
「…。」
「…。」
しかしあんなキラキラした漫画みたいな人いるんだなー。やー、良い目の保養になった。ありゃ絶対ファンの人いるね、確実に。というか杉崎家美男美女ばっかりだったなぁ。バイトの子すら格好良かったもんなぁ。あんな家族いるんだなぁ。
「…。」
「…おい。」
「…あ、はい。」
脳内独り言の世界からいきなりシリアスばしばしの空間に引き戻され、紗耶は背筋を伸ばした。
「…聞かないのか?」
え、何をですか?と一瞬紗耶は首をひねりそうになったが、ああ、あの事かと口を開いた。
「あ、じゃあ聞いちゃいますけど、」
「聞くのかよ!」
「えぇ?す、すみません…。」
ひぃ、と眉を八の字にしながら紗耶は下を向いた。