お腹が空きました。
案外めんどくさい男、杉崎。
紗耶はもうなんといっていいかわからず、しばらくむむむと考えていたが、結局まぁいっかと諦めてしまった。
「…。」
「…。」
「…もう二度と作らねえって、言っちまったんだよ。」
「…え?」
観念したような声に、紗耶は目を丸くして杉崎の方を向いた。
気まずそうな杉崎が、前を向きながらぼそぼそと喋る。
「まぁ、なんだ、昔…色々あってな、。あー…今考えるとしょうもない事だったんだが、 とにかく、家族には、その…内緒にしてくれ。すまん。」
「…。」
…。
紗耶は黙って杉崎を見つめる。
こんな、申し訳なさそうな彼は初めて見た。
カッコ悪い自分と戦っているような瞳に紗耶は内心オロオロする。
ど、どうしたのだろう。
いつもの杉崎さんは厳しくて怖くてまっすぐで、上の立場の人すら叱りかねない強烈さがあるのに、…こんなろうそくの炎のように揺らいでいる姿は見たことがない。
慌てながらもこくんと静かに頷いた紗耶に、杉崎はふぅと気を抜き、ため息を一つついた。