お腹が空きました。
苦笑しつつも杉崎の表情は少し柔らかくて。
紗耶もふふっと微笑みながら傍らに置かれたボールに目を走らせた。
「その温めた生クリームとバター、入れちゃわないんですか?」
「まぁ待て。砂糖が溶けてからだ。」
そう言いながら杉崎は木べらを更にくるくる動かし、様子を見る。
「…そろそろ、か。」
鍋に頃合いを見て杉崎がバニラエッセンスと生クリームとバターを投入した。
ふわりと広がる甘い香り。
クリーミーな空気を胸一杯に吸い込みながら紗耶は幸せなため息をつく。
「はぁーーーー。美味しそう…。」
沸騰してきた鍋をのぞき込み、杉崎は火を弱火にした。
「ほら、手が止まってるぞ。」
鍋に視線を落としたまま、杉崎はニヤリと笑って紗耶をたしなめる。
あ、そうだそうだと紗耶はまたチョキチョキハサミを動かした。