恋……スル?-菅野 聡 編-
「……………………っ」



パカッと開けた小箱の中には、蓋の内側にデザインされた2人の天使が向き合っていた。


…いつか専務が言ってたなぁ。

永遠の幸せを願うこの天使が、中の指輪を通じて持ち主を見守り続けていくんだって…。



「いつ渡せるかわからない相手を想いながら待つんだって、そうお店の人に言ったんだけどね。
笑われるかと思ったら、真剣に聞いてくれたよ」



「……………………っ」



――『そのお客様はペアリングを所望して注文されたのだが、今は渡す相手が側にいないらしい』


――『だけどいつかきっと渡せる日を夢見て、それまで毎日リングを眺めて過ごすと商品を見つめながら仰っていたよ』



以前専務が言ってた事を思い出した。


あれって、聡の事だったんだ!


そして今日専務が聡にお辞儀したのは、お客さんだったからなんだ。
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