恋……スル?-菅野 聡 編-
「簡単だよ。
僕に似合う指輪をデザインしてほしいんだ」
高級ホテルの一室。
打ち合わせの為に急遽専務が設けた場所だ。
ここで長々とお客様の要望を聞いたり、時にはエピソードまで話されたりするんだろうな…。
しかし、専務の言う上得意様である人との打ち合わせに来た途端、開口一番に言われた言葉はそれだったのだ。
て言うか、この上得意様って…
「この度も当アトリエrelierをお引き立て下さいまして、ありがとうございます。
是非とも大沢様にご満足頂けるような指輪を、ご用意させて頂きたいと思います」
深々ーく頭を下げる専務の向こう側に座るのは、いつかスケート場で会ったあの男だ!
ホテル経営を中心に幅広く活動している大沢グループの御曹司。
その美貌と優雅さに、スケートでは氷上の貴公子だなんて呼ばれちゃって。
まさか、うちの上得意様でもあったなんて!