恋……スル？-菅野 聡 編-

「ありがとうございました。
どうぞ、お気を付けてお帰り下さいませ」




そんな言葉が聞こえてきたお店へと続くドアを開けると、ちょうど来店のお客さんが帰った所なのだろう、深々と最敬礼している専務の背中が見えた。




「あ…おはようございます、専務。
梅津、只今出社しました…」



とりあえず今はお客さんのいない店内。

私はビクビクしながら、そっと専務の背中にあいさつをした。



「……………………」



やがて最敬礼していた身体をゆっくり起こした専務は、クルリと振り返り私の姿を捉える。



ビ ビクビクッ！！


来る？
例の「バカもーん！」が来ちゃう？


ヒャーっと心の中で覚悟を決めながら、私は目をつむって専務の言葉を待った。