知らない闇と、骸
私の言葉を聞き、眉間に皺を寄せるとクローゼットの中からつまみ上げてきた。
「あ。」
三歳くらいのとき、ゴーマム(お祖母ちゃんのこと)から貰った、エルフィ(天使)の人形だった。
「ジロ。それは人形よ?昔、イルキお祖母様から頂いたの。」
しかも、天使。
鬼のような存在ではない。
それとも、妖魔にとってエルフィは鬼と同じ扱いなのかしら?
「人形?クソエルフィ?ちげぇな、臭いが鬼だ。」
鼻をひくつかせ、エルフィの頭を鷲掴む。
「なら、鬼なのかもしれないわね。」
冗談半分ふざけ半分で言ってみた。鬼などいないと勘ぐっていた。
妖魔がいるのに鬼がいないなんてありえないのに・・・。
「・・・鬼だ。」
ジロはエルフィの頭をぶ千切った。
首からは柔らかな綿があふれている。思わず、視線をそらした。
エルフィは、ゴーズ(神様)の使い様。
象っただけの人形だとしても、それが壊されるのを見るのは良い気がしない。
ジロの手には布と綿だけになった、《エルフィだったもの》があった。
「鬼がいる。ここだ。」
長い指を二本、綿の塊に突っ込む。
引き上げてきた指と指の間には何かの塊にしがみつく、緑色の小さなイキモノがいた。
親指ほどの大きさで、何かを叫んでいるようだったが小さすぎて聞こえない。
「それ、が・・・鬼?」
近くに行き、まじまじと見るが、鬼には見えない。