知らない闇と、骸
大きなくりくりの瞳、小さな口、裸の赤子をうんと小さくして親指くらいにしてしまったようだった。
「おい、あんま近づくな。危ねぇぞ。」
「え?でも可愛いよ?」
私は油断して人差し指をひょい、と出した。
ガブリッ!!!
「痛っ!!!!」
思わずパァン、と払った。
「大丈夫か?」
ジロは鬼に何かをしてから私の元に来た。
「こりゃやべぇな。こんなに深く噛まれやがって。だから危ねぇっつったろ。」
「~~っ!!」
指先に感覚が無くなっていく。
痛みに顔をゆがめる。
「指出せ。」
真っ青を通り越して、薄黒くなってしまった指先を見せた。
墨に指突っ込んだみたいになっている。
「ふん、毒含んでやがる。」
まじまじと指を見たジロはそのまま口に含むと、毒を吸い出してくれるようだった。
「これで大丈夫だろ。あとは、これ食え。」
渡されたのは、ピンポン玉くらいのドクドクと動く真っ赤な丸い何か。
「こ、これって・・・?」
「カルの実。森の心臓って言われる木の実だ。鬼の毒牙に良く効く作用がある。」
仕方なく口に含むと意外とのど越しがいい。
味は無いが、冷たかったので心臓と想像しなくてすんだ。
「よし、これでいいだろ。そろそろ結界も破れちまうしな。」
一瞬で作っていた、薄黄色の丸いドームは結界だったのか。
人差し指にクイの実(妖怪の噛まれ痕に効くらしい)の中身を塗り、包帯を巻かれた後ジロは結界の中で暴れる鬼に近づいた。
「お前、もうこいつに近づくなよ?」
「う、うん・・・。」
すでに鬼恐怖症になりそうだ。