知らない闇と、骸



ジロと私、それからマルツはいっせいに東館の方を向いた。

叫び声は確かに東館の二階からだった。
振り向いたと同時に、走り出す。

本能が、急かす、急かす。
足が動く。思考は止まる。
今だけは、何も考えるな。
無心で足だけを動かして・・・。


東館の二階。
廊下の一番隅。
そこは、お父様の書斎。

扉の前には大勢の、使用人。
「だ、誰かっ」
新人の見習いバトラーが取り乱して叫ぶ。
腰が抜けたのだろうか、尻餅をついている。

私は、慌てて駆け寄った。

「何があったの?」
「ぁ、お、お嬢、様・・・。」
開け放たれた扉を跨ぐように膝をついていたメイドのラテが私を仰ぎ見る。
その蒼白く、頬にはボロボロと涙がこぼれている。



嗚呼、そうか。

ラテは昔、母に仕えていた。
母が亡くなった時と、同じ顔。





私は悟ってしまった。


おそらく、この暗い部屋の奥にはー・・・。





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