知らない闇と、骸



頭がこちらを向いて転がっている。

丸で、首なしという妖怪みたいだ。
頭を失った胴体は、ソファーに腰掛けられている。


ふぅー、と一つ、深呼吸する。
それから胴体に近付く。

蛆がわいている様子はない。
左手と首が食い千切られ、心臓はえぐり盗られている。


・・・大丈夫。大丈夫。

私がこれからするべき事は?
動揺している使用人をこれ以上混乱させる訳にはいかない。


「ラテ、しっかりしなさい。医者を呼んでくれるわね?マルツ、ポレツ(警察)を呼んで。サルバスはいる?」
有能な執事を呼ぶ。

「ここに。」
主を亡くして動揺はしていたみたいだ。
「すぐに、身近な親戚に連絡を。だけど、初老会にも連絡をしなくてはいけないでしょ?だから・・・。」「ハルトン様に連絡、ですね?承知致しました。」

流石だ。私がしたいこと全て先にやっておいてくれる。
ハルトン叔父さんは既に到着していた。
このフェルディーナ家を支える長老会の長、ハルトン叔父さん。



「アレン。」
「はい・・・。」
ハルトン叔父さんは私を猫可愛がってくれていた。
頭を優しく撫でられ、今まで我慢してきた涙が溢れる。


その涙の粒一つ一つが、床に落ちるまでに宝石へと変わる。
ルビー、サファイア、エメラルド、ダイヤモンド、パール、アメジスト・・・。
様々な宝石が床に積もる。




「これはー・・・。」
ジロの、驚く声が聞こえた。






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