知らない闇と、骸
頭、首、そして、左手と心臓までもが抉り取られている絵図は、水晶越しにも生々しく映って見えた。
「確かにのぉ。ちと、やりすぎではないのか?バロウ。」
温厚そうな目元が印象的なおじいさんが、豊かな白ひげを擦るように撫でつけながら、長身の男を見た。
「へっ。狼人間の俺にとっちゃ、あれだけで済ませてやったんだぜ?」
口は、耳の後ろまで裂けその間からは、長く太く鋭い牙が連なって見えた。
「お前は、品が無いんだよ。」
「蛇人間のお前が言うなよなぁ。チロチロ舌出しやがって、気色悪ぃ。」
蛇人間、といわれた男は顔をしかめた。
「失礼だな。僕は品性を失っていない。」
「そこらへんにしておけぃ。」
鋭い声が飛ぶ。先ほどの老人だ。
「これから、この娘をどうやってこの世界まで来させるかの検討を始める。」
その言葉に、皆、キッと緩んだ顔を引き締めた。