知らない闇と、骸
「ジロ、あの本取って。」
「ほらよ。っていうか、お前、もうそれ読んだのか?!」
千ページを超える超大作、『星のつぶやき』を読み終えた私をジロは信じられないような目で見てきた。
ふと見上げた時計で星のつぶやきを呼んでから、二時間もたっていないことを知った。
「・・・時間ってあっという間だね。」
あれから、数日が経った。
暫くすれば、お父様のお葬式が行われる予定だ。
「ねぇ、ジロ。ジロにとって時間って短い?」
問いかければ、ソファーに寝転がっていたジロは体を起こした。
「まさか。とてつもなく長ぇよ。俺たちは四万年以上生きるんだ。むしろ、俺たちは不死といっても良いくらいだからな。」
四万年。
とてつもなく長い、先すら私には想像できない。
それくらい長い年月、彼らは生き続けるのか。
「俺たちは、必ず四万年以上生きる。病気も刃も俺たちの命までは奪えねぇ。」
たとえ、酸素がなくなろうが地球がなくなろうが、臓物が抉り取られようが関係ない、とジロは言った。
それは、なんと悲しいことなのだろうか。
人の命は短い。
ジロは今まで、何人もの人間の死を見てきたのだろうか。
その間、何を考えていたのだろうか。
「言っておくけど。」
ジロの言葉に顔を上げた。
「俺はまだ百年ちょいしか、生きてない。」
百年。それでも、百年という数字は、とてつもなく長いと思った。