†危険な男†〜甘く苦い恋心〜Ⅱ
ーー…
「一時的な記憶喪失ですね。原因は刺されたことによるショックだと思われます」
「記憶、喪失……」
医者の口から淡々と語られる言葉に、頭が着いていかない。
廉が、記憶喪失…?
「彼と話した感じですと、自分や職業のことについての記憶には支障はなかったようです。ただ、交友関係についての記憶だけが…抜けてしまわれていると思います」
「じゃあ…俺や宮崎のことも何も覚えていないってことですか?」
岡田くんが言うと、医者は硬い表情で頷いた。
岡田くんは何も言えないのか、黙ってしまった。
「……でも、記憶は戻るんですよね?」
あたしは小さく呟いた。
「戻る可能性は十分にあります。ただ、それがいつになるかは彼次第になります」
廉次第…。
あたしはギュッと拳を握った。
「ありがとうございました。これで失礼します」
あたしと岡田くんは一緒に診察室を出た。