†危険な男†〜甘く苦い恋心〜Ⅱ
ジレンマ
「廉、こんにちは」
「おう」
もうすぐで退院というこの時期。
あたしは相変わらず、彼の病室に通っていた。
「あれ?筋トレなんてしてたんだ」
テーブルの上に無造作にダンベルが置いてあり、あたしはそれに触れる。
「あぁ。退院したらすぐに仕事復帰するつもりだからな」
廉は柔らかく笑うと、ペットボトルの水を飲んだ。
廉は真面目だもんね。
あたしはダンベルを見てぼんやりとそう思った。
「廉、あの…」
「樹里」
同時に声を発してしまい、目が合う。
「あ…いいよ。先に……」
「……じゃあ」
廉はグイッとあたしの腕を引き寄せると、優しく抱き締めた。