†危険な男†〜甘く苦い恋心〜Ⅱ
リビングに戻ると、廉が窓際に佇んでいた。
廉…?
「廉、どうしたの…?」
あたしが声を掛けると、廉はゆっくりとこちらを向いた。
そして、私の前まで歩いてくるといきなり強く抱き締めてきた。
「れ、廉…?」
突然の行動に、あたしは目をパチパチさせるばかりだった。
「樹里…」
更に強くなる力に、あたしは壊れそうになる。
「廉っ…苦しいよ……」
「悪い、だが…今は離せない……」
廉はあたしの体を掻き抱くようにして、そう言った。
「廉、何かあったの…?」
「俺…思い出したんだ。全部」
え?
思い、出した?
あたしは驚いて、彼から素早く体を離した。
「嘘っ…!思い出した、の?」
「あぁ。あの日あったことも、今までのことも全部な」
廉は事件の傷跡をそっと撫でた。
「れ、ん…」
「悪かった。心配かけさせたな」
廉はあたしをそのまま自分の胸に抱き込んだ。
廉の記憶が戻った。
こんな嬉しいことないよ…。
あたしは彼の胸の中で子供のように泣いてしまった。