わたしのピンクの錠剤
窓際に置いた丸椅子に、わたしはされるがままに腰掛ける。
「はい、背筋をのばして」
先生はわたしの長い髪を束ねるように持つと、毛先に軽くスプレーした。
初めて嗅いだ匂いにうっとりする。
先生は小気味よくサッサッと毛先を梳かす。
そして、根元から毛先へ、ゆっくり大きく髪を梳かした。
わたしは窓越しにドッジボールに興じるクラスメイトを目で追っていた。
そして、どこからともなくこみ上がってくる悦びに浸っていた。
その時のわたしは間違いなくこの学校で一番に特別な存在だった。
髪を梳かし終わり、先生はわたしの肩を両手でつかむと椅子を回転させた。
「はい、おわり」
顔と顔が近い。
ドキドキして、わたしは先生と目を合わすことができなかった。