わたしのピンクの錠剤
 
まだ早い、無茶だという病院側の言葉を親父は無視した。


まあ、現役ではないにしろ、医師と看護師がついている。

病院側も諦めて、最後には手伝ってくれた。


伊藤工務店と書かれたライトバンの後部にマットレスをひいて、丸めた二つの毛布の間に寝かされた。

なんだか、荷物になったような気分。


陽子さんが運転して九十九里を離れた。



途中、陽子さんは疲れた風でサービスエリアに入った。

それなのに親父は運転を代わろうとしない。


「親父、運転代わったら」

陽子さんに申し訳なくて親父にそう言うと意外な答が返ってきた。


「免許、持ってないんだ」


母子健康手帳といっしょに出てきた親父の運転免許証が頭をよぎる。


「免許証、見たことあるんだけど・・」

「おまえ、何でも知ってるんだな。昔は持ってたんだ。だけど、免許の更新を忘れていて、失効しちゃったんだ」


「失効?」


忘れて無くしちゃったってこと?



親父らしくない。


 
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