わたしのピンクの錠剤
 
「陽子さんは親父が医者だったころ、同じ病院にいたんでしょ?」

陽子さんは読んでいた本を閉じて、顔を上げた。

「誰がそんなこと、言ったの?」

「親父だけど・・」

陽子さんは信じられないという顔をした。



「私が産まれたときにも、親父と同じ病院にいたの?」

「同じ病院だったけど、お父さんとは病棟が違ってた。お父さんは産婦人科で、私はNーICUってところだった」

「エヌ・アイ・シー・ユー?」

「新生児集中治療室。未熟児とか、疾患のある赤ちゃんとかがやってくるところ。あいかちゃんは産まれてすぐに私のところへ、やってきたのよ」

「本当に?未熟児だったの?」


「ううん、帝王切開だったんだけど、普通じゃなかったの」


 
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