わたしのピンクの錠剤
 
「産まれた私をお母さんは抱っこしたの?」


陽子さんは目を伏せ、かすかに首を横に振った。

「それはなかったと思う。病院に運ばれた時には意識はなかったって聞いている」

「そのまま、死んじゃったってことなの?」


目だけで頷く陽子さんを見て、私は言葉を失っていた。


「でもね、あいかちゃんが無事に産まれたのは奇跡的なことだったのよ。お父さんが神様の意志に背いて、死の淵からあいかちゃんを救い出したんだから」

陽子さんは悔しそうにそう言う。



でも、すぐに自分でその言葉をひっくり返した。

「そうじゃない。神様の意志に背いたのはお父さんじゃなくて、お母さんの方。自分だけならまだしも、あいかちゃんまで死の淵に追い詰めたのよ。あまりに身勝手すぎる。私は絶対に許せない」


語気の強さに私は圧倒される。


 
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