わたしのピンクの錠剤
 
「わざわざすいませんでした。連絡を頂いて助かりました」

親父の言葉に立花先生は頷き、思い出したように私の顔をのぞき込んだ。


「あいかちゃんは事件があった日のことは覚えているかな」

立花先生はチラッと親父を垣間見る。



「あいかちゃんを診察した日があっただろ?事件が起きたのはその日だったんだ」

私は小さく頷く。

「実はその日、先生は殺された人に会ってるんだ」

驚いて私は先生を見上げた。


「千石製薬の黒木という人でね。あの日、午後の診察が始まる前に僕のところへ来ていた」

「あの日の午後?」

「そう、2時前だったかな」

「2時前?ホントに?それじゃ、美智子先生は犯人じゃない」

「どういうこと?」

「あの日、記憶が途切れて、てっきりその間に事件が起きたとばかり思ってて、私、心配で心配で。でも、違ってた。そうじゃなかった」

「おいおい、ちょっと落ち着いて、先生にもわかるように話してくれないか」


 
< 117 / 264 >

この作品をシェア

pagetop