わたしのピンクの錠剤
「わざわざすいませんでした。連絡を頂いて助かりました」
親父の言葉に立花先生は頷き、思い出したように私の顔をのぞき込んだ。
「あいかちゃんは事件があった日のことは覚えているかな」
立花先生はチラッと親父を垣間見る。
「あいかちゃんを診察した日があっただろ?事件が起きたのはその日だったんだ」
私は小さく頷く。
「実はその日、先生は殺された人に会ってるんだ」
驚いて私は先生を見上げた。
「千石製薬の黒木という人でね。あの日、午後の診察が始まる前に僕のところへ来ていた」
「あの日の午後?」
「そう、2時前だったかな」
「2時前?ホントに?それじゃ、美智子先生は犯人じゃない」
「どういうこと?」
「あの日、記憶が途切れて、てっきりその間に事件が起きたとばかり思ってて、私、心配で心配で。でも、違ってた。そうじゃなかった」
「おいおい、ちょっと落ち着いて、先生にもわかるように話してくれないか」