わたしのピンクの錠剤
私はあの日のことを立花先生に話した。
病院で男に会ったこと。
男が親父のこともお母さんのことも知っていたこと。
男が美智子先生のマンションの前で待ち伏せていたこと。
それが12時半ぐらいだったこと。
男が立花先生に会いに行ったのは、それより後の2時だったこと。
そして、男と美智子先生は何の関係もないこと。
「私の記憶の無い間に何かあったんじゃないかって、ずっと思ってて・・・。でも、良かった。そうじゃなかった」
「あいかなでも現れたの?」
「え?」
「記憶が途切れたんだろ?」
私は頷く。
「どのくらいの間?美術館の時みたいに10分間ぐらい?」
「ううん」
「もっと、長かったの?」
「うん。
・・・夜まで」
「うーん、夜までかぁ。美智子先生は何て言ってた?」
「美智子先生には会ってないの。気がついたら家にいた」
「えっ?それじゃ、美智子先生の午後のアリバイは無いんだ」
「アリバイ・・・」