わたしのピンクの錠剤
 
「私と親父のことは診察の時にわかったんじゃないの?」

「いやぁ、診察の時にはわからなかった。小田なんて名前はどこにでもあるし、まさか小田が仙台にいるとも思ってなかった。それに先生はあいかちゃんの名前を知らなかったんだ。わかってたら、診察の後で小島先生にカウンセラーを紹介したりしなかった」

「えっ、カウンセラー?」

「いや、あれだ。なんちゅうか、・・すまん。申し訳ない。あいかちゃんが小田の子供だなんて考えもしなかったんだ。建設業の職人とその娘の二人暮らしだろ。性的虐待に起因する単純なDIDだと判断したんだ。だから、カウンセラーにまかせることにした。別に悪気はなかったんだ」

「そうじゃなくて、あの日、美智子先生はカウンセラーに会いに行ったの」

「そうだろう。午後に行く約束をしてた」

「ってことは、アリバイになるんじゃないの」

「おお、そうか。そういうことだな。ちょっと、カウンセラーに電話して、彼女が来たか聞いてみるか」


立花先生はポケットの中を探りながら病室を出ていった。



 
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