わたしのピンクの錠剤
病院から帰ってくると、あいかちゃんとお昼をここで食べました。
その後、あいかちゃんをひとり、学校に向かわせました。
でも、あいかちゃんはすぐに戻ってきたんです。
しかも、別人格の「あいかな」に変わって・・。
「すげぇ、むかつく。あいつが待ち伏せていやがった」
「ど、どうしたの」
美術館では何が起こったのかわからないまま、ただただ狼狽えるばかりの私でしたが、あの時とは違います。
あれからネットで調べ、多重人格についてかなり勉強しました。
ある程度は理解していると思っていたんです。
でも、それが良くなかったのかもしれません。
「あいつが待ち伏せてやがったんだよ。蹴り入れてやったけど、もうちょっと締めてくるかな」
そう言いながら台所へ向かいます。
「き、キミはあいかなクンかな?」
「あれっ?美智子先生、どした?今日はやけに物わかりがいいじゃないか」
「そりゃ、私だって学習するわよ」
台所で私に背を向けて物色していたあいかなでしたが、振り向くとその手に包丁が光っていました。
「な、何してるの。やめなさい」
「大丈夫だって、ちょっとちらつかせるだけだから」
止める私を振り切ってあいかなは出て行きました。
もちろん、私も後を追いかけます。
階段まで行き、一階に下りてみましたが、そこにあいかなの言う「あいつ」はいませんでした。