わたしのピンクの錠剤
なだめすかして、あいかなを部屋に連れ戻すと「あいつ」のことを尋ねました。
「あいかちゃんが、おとなしいからって、つけ上がりやがって、むかつくやつなんだ」
「詳しく教えて。先生、キミと話がしたかったんだ」
その言葉に嘘はありません。
多重人格って、心がバランスを取るためにやる最後の防御手段だと思うんです。
でも、あいかなは強すぎます。
あいかなの存在はかえってバランスを崩しているように思えてならなかったんです。
なぜ、こんなにもあいかなは強くなってしまったのか、私は知りたいと思っていました。
「詳しくったってなぁ。あいつがあいかちゃんをかぎ回って、こんな所までつけて来てやがった。だから、オレがあいつに蹴りを入れてやった。それだけさ」
あいかなはぶっきらぼうに答えます。
「それで、あいつって誰なの?」
「あいつが誰かって?オレが知るわけないだろ」
「そんな、知らない人を殺そうとしたの?」
「殺そうなんて思っちゃいないさ。どうしてもこの小さな身体だと体格的に劣るからね。これ以上、つけ回されないための対策ってやつ?警告も含めてね」
私はあいかなの凶暴性に底知れぬ不安を感じました。