わたしのピンクの錠剤
大丈夫という声に後押しされるように、美智子先生のマンションを後にした。
その時にはまだ、あいかは背中で眠るように気を失ったままだった。
月の綺麗な夜だった。
肩に回していたあいかの腕に精気がよみがえり、背負ったあいかが軽くなったような気がした。
「気がついたか?」
あいかは寝返りを打つように、背中にあてた顔の向きを替えた。
「ううん、まだ気がついてない」
「そうか、じゃあ、おんぶするしかないな」
「うん」
「お父さん」
「なんだ」
「ううん、なんでもない」
「そうか」
アパートに着くころには、あいかはまた眠っていた。