わたしのピンクの錠剤
私はベッドの中にいた。
身体を寄せ合い、隣には男の人。
そして、その人の声。
「俺には双子の弟がいた」
私は仰向けのまま、目を閉じて、夢見心地で聞いていた。
「でも、産まれた時には死んでいたんだ」
私はゆっくり目を開け、身体を横に向けると腕をその人の胸にまわした。
輪郭のぼやけたその人は天井を見つめたままだ。
私はその人の唇をじっと見ていた。
「両親はその子にあいかなって名をつけた。哀しい哉と書いて哀哉。変な名前だろ。それだけ両親は哀しい思いをしたんだと思う」
自分のお腹の中で成長してきた赤ちゃんが産声を上げることなく天に召される、そんなことを想像するだけで胸が張り裂けそうだった。
「でも、哀哉は俺の中でいっしょに大きくなったんだ」
私はその人の哀しい思いを共有するかのようにその唇にキスをした。
そして、その人の胸に顔を埋めた。
「嘘みたいだろ。でも、本当なんだ」
その人は私の頭を撫でながらそう言い、私はその人の優しい息づかいを聞いていた。