わたしのピンクの錠剤
 
交番で地図を描いてもらい、駅前からずっと歩いた。


退院したばかりの足には、無謀なように思えたが、なんとか痛みも感じないで教えてもらった場所までたどり着いた。


その家はアパートと畑に囲まれた一軒家だった。

でも、お巡りさんが言ったように表札にあったのは別の人の名前だった。

お巡りさんの勘違いをずっと期待しながら歩いて来ただけに、どっと疲れが出た。

 
念のため、チャイムを鳴らし、その家の人を呼び出した。

私とそう変わらない女の子が出てきた。

母子健康手帳を彼女に手渡し、住所を確認してもらった。

やっぱり、その住所に間違いなかった。


誰を責めようがなかった。
この間、電話したばかりなのに・・。


「でも、電話番号はちがうよ」


彼女は母子健康手帳の電話番号を指しながらそう言った。

光が差し込んできたような気がした。

電話番号はそのままで、住所だけ変わったんだ。


私はお礼もそこそこにその家を後にした。


 
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