わたしのピンクの錠剤
 
しばらく席を外していた茜さんがアルバムを抱えて戻ってきた。

私は未だに話を切り出せないまま。


「あいかちゃんも見たかったでしょ。お父さんの写真」


お父さんの写真?・・・・

 違うんです。
 私は下平達哉の子供じゃないんです。
 私は小田健一の子供なんです。


でも、私の心の声は届かない。


茜さんはアルバムを開いて私の前に置いた。

「ほら、見て、見て!」


私はちらっと見て、吸い寄せられるように凝視した。

「こ、これ・・・」

私は思わず声がもれていた。

そこには小学生が写っていた。

半ズボンじゃなかったら、女の子と見間違うほどに可愛らしい男の子だった。


「でしょ。あいかちゃんにそっくりでしょ」



写真の中のその男の子は私にそっくりだった。

そして、その男の子は下平達哉に違いなかった。


私はその写真を見つめたまま、動けなくなった。


 
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