わたしのピンクの錠剤
小田からの手紙
突然の非礼をお許しください。
私は達哉さんと愛子さんの不妊治療の担当医だった小田といいます。
愛子さんの最後を看取った医者でもありました。
そして、恥ずかしながら赤ちゃんを連れ去った男です。
許してもらえるとは思っていません。
でも、どうしても謝りたかったのです。
愛子さんが病院に運ばれてきたときには、瀕死の重体でした。
でも、まだ意識はあったのです。
そして、その朦朧とした意識の中で私に言いました。
「子どもをお願い」
私はその意味をずっと考えていました。
愛子さんも、達哉さんもいない今、私に赤ちゃんは託されたんだと判断しました。
その時にちゃんと法的手続きを取れば良かったのかもしれません。
しかし、達哉さんのご家族に赤ちゃんが渡ったら、もう二度と会えないような気がしたのです。
それは耐えられないことでした。
何故なら、赤ちゃんは私と愛子さんの娘なのです。