わたしのピンクの錠剤
「こんな楽しい食事は、あいつが死んでから初めてだったな」
しんみりとおじいさんが言った。
頷きながら、おばあさんは私の手を取った。
「私たちといっしょに暮らしてみない?」
私はその言葉にときめいた。
照れてしまいそうなほどに嬉しかった。
「今すぐにとは言わないから。ね、じっくり考えてみて」
そう言われて初めて親父のことを思い出した。
急に胸が痛んできた。
ときめいたことが恥ずかしいとさえ思った。
「あいかちゃんは小田さんの娘じゃなくて、達哉の娘なんだから、小田さんと暮らす理由なんて何にもないんだよ」
そうなんだなぁ、と思った。
親父と私をつなぐものは何もないんだ、とあらためて気がついた。
そう思うと涙がこぼれていた。
ぽろぽろと止めどなく涙がこぼれ落ちていた。