わたしのピンクの錠剤
目覚めると朝食の用意ができていた。
それは憧れていた普通の暮らし。
「実は今日、小田さんが迎えに来ることになっているの。あとで茜と駅まで迎えに行ってきてくれないかな」
親父がやってくる?
そう考えるだけで憂鬱になった。
下平には連絡するなと言われていたのに、言いつけを守らないで、こうして私はここにいる。
それだけで、もう間違いなく親父の機嫌は悪い。
それに何よりも、本当の親子じゃないとわかった今、どんな顔をして親父に会えばいいのかわからなかった。
「あの、親父にはあのことを黙っててもらえませんか」
「あのこと?」
「私にそっくりな写真のこと」
「うーん、私たちとしては、達哉の小さい頃の写真で小田さんを問い詰めるつもりだったのよ。今まで騙されてきたわけだし」
「親父だって、騙すつもりじゃなかったんです。お願いです。今日は黙っててもらえませんか」
「そう言われてもねえ・・」
「かあさん、いいじゃないか。そうしてあげなさい」
おじいさんがのそりと現れた。
「あいかちゃんのためを第一に考えようじゃないか。一番苦しくて、辛い思いをしているのは、あいかちゃんなんだから」