わたしのピンクの錠剤
ちらっと親父を見ると、苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
見かねたおじいさんが口火を切った。
「それじゃ、私から・・」
「いえ、私が話します」
遮るようにして一呼吸いれ、親父はようやく話す決心をした。
あの日、何があったのか、本当はよく知らないんだ。
いくら尋ねても、警察は何も教えてくれなかった。
テレビだって、達哉が殺されたこと。
死因は刃物で刺されたことによる失血死だったこと。
そして、犯人は妻の愛子で、その愛子は自殺したこと。
それの繰り返しで、詳しいことはわからなかった。
「お母さんが犯人?」
「そうらしい」
「どうして?」
「わからない」
「自殺したの?」
「そうらしい。確かに、胸に深い刺傷があった」
「わたしがお腹にいたのに?」
「・・・」