わたしのピンクの錠剤
「いや。いやっ。いやーっ」
突然、わたしは耳を両手でふさぎ、激しく身体を振りながら大声で叫んだ。
それは悲鳴にも近い金切り声だった。
親父は慌ててわたしを抱きしめる。
それでも、わたしは涙をこぼしながら、しゃくりあげた。
「いやっ、お父さんといっしょにかえる。おいてかないで、おねがい。おいてかないで」
「大丈夫、大丈夫。置いてかない。置いてなんか行くもんか」
親父はわたしの悲しみを溶かすように強く抱きしめ、髪を撫でながら応えた。