わたしのピンクの錠剤
 
ブルルッとわたしの心が目を覚ました。

『大丈夫だよ。ちゃんとここにいるから』


届かないとわかってはいる。

それでも、声を掛けた。



『よかった。帰ってきてくれたんだ』


『えっ、私の言葉が聞こえてるの?』

『うん』


思いもしなかったことが起きた。

正直私は戸惑う。


『る、留守にして、ごめんね』

『ううん』


『えへへ、でも、なんだか照れるよね』

『うん』


わたしの嬉しそうに弾む心がビンビン伝わってくる。

それに呼応するように、私の心も大きく弾んだ。



これが、私とわたしの生まれて初めての会話だった。

『もう、いなくなんないでね』

『うん。もう、ひとりにしないから』



わたしは喜びに包まれていた。


 
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