わたしのピンクの錠剤

その日から、達哉の中には達哉と哀哉がいると意識しはじめた。

そうすると、今までは気にも留めなかった二人の違いが浮かび上がってきた。


それは些細な仕草の積み重ねだったけど、やがて二人の性格の違いまで区別できるようになっていったの。


 


おばあさんが「哀哉」と口にしたとき、その名前は夢の中で達哉が言った「哀哉」と名前ばかりかイメージまでピッタリ重なった。


あれは夢じゃなかった。

私が見た達哉のおぼろげな記憶は幻なんかじゃなかった。



あれは、やっぱり愛子の記憶だったんだ。


私はそう確信した。


 
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