わたしのピンクの錠剤
その時、黙って聞いていた親父が口をはさんだ。
「達哉さんはカウンセリングとか受けられなかったんですか」
おばあさんは心外な問いに睨みつけるように親父を見た。
「もちろん、最初はカウンセリングも受けたし薬も飲ませた。でも、何年経っても何の効果もなかったし、なんだか馬鹿らしくなって、仕舞いには諦めたのよ」
「そうは言っても、そのままじゃ達哉さんにとって、負担が大きかったんじゃないですか」
「負担?・・・
そうですか、負担ですか。
本当はそうだったのかもしれないですね」
おばあさんは目を伏せた。
「あの頃はそれがわからなかった。達哉は包容力があるっていうのかしら、平気で哀哉を受け入れているとばかり思っていた。
いえ、やっぱりそうよ。
負担とかじゃなくて、達哉にはそれが当たり前だったのよ。
だから、死ぬまで二人はいっしょにいて、喜びも悲しみも快楽も痛みも、全てを共有し続けたのよ」