わたしのピンクの錠剤
 
「あいかなは、いるのか?」

わたしには何の事かわからない。

それなのに、親父は責め立てるように、わたしの肩を持って激しく揺すった。



「あいかなだよ。あいかなは、そこにいるのか?」

わたしは訳がわからず、恐怖で震えている。

「おい、どうなんだ」

親父の怒鳴り声にわたしは耐えきれなくて、とうとう心の奥深くに閉じこもってしまった。



「親父、落ち着いて」

親父は私の肩を揺するのを止めた。

私の肩に手を置いたまま、私の顔をのぞき込んた。


「おまえか」

「ひどい。おまえかはないでしょ」



親父が何を考えているのか、私にはわかっていた。

まさに、親父と私の考えはいっしょだった。



今更ながらに思い返してみれば、事件の日以来あいかなに取って代わられることもなかったし、何よりその気配さえ感じなかった。



そう、あいかなは行方不明だった。



「立花先生に会いに行こ」


親父もきっと同じ思いだったんだろう。躊躇することなく頷いた。

親父は美智子先生のお母さんに後で詳しい事情を話すことを約束して、その場を離れた。


 
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