わたしのピンクの錠剤
 
仕切り直して立花先生は仮説を展開する。

「達哉と哀哉はひとつの肉体を共有する形でそれぞれ成長してゆく。それで、いいね。性格も違えば好みも違うふたりだから、いろいろ葛藤があったんじゃないかな」

「葛藤?」

「まあ、細かいことを言えば、部活は何に入るとか、高校大学はどこへ行くかとか、就職はどうするのかとか。そして、結婚だ」


そこまで聞いて、ようやく私にも共有することの難しさがわかった。


どちらかの犠牲の上に達哉と哀哉の関係は成立していたんだ。



「やがて、その結婚生活にも破綻が訪れる。達哉と愛子のふたりだけの問題ではなかったはずだ。多分、達哉と愛子と哀哉、それに小田も加わって複雑な感情のもつれがあったんだと思う」

「感情のもつれ?」

「達哉の愛子に対する猜疑心、愛子の哀哉に対する嫌悪感。哀哉の達哉に対する嫉妬心、等々だな」

「哀哉の嫉妬心・・」


「そして、愛子は達哉を殺した。もしかすると、愛子は達哉じゃなく、哀哉を殺したのかもしれない」


哀哉を、殺した。
愛子が、哀哉を、殺した。


 
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