わたしのピンクの錠剤
 
その時だった。

熱い塊が下へ下へと移動していく。

(だめぇーっ)

哀哉だ。哀哉が赤ちゃんに・・。

「お・だくん・・こ・ども・・おねが・い・・あいかな・・あいか・な・・た・すけ・・て・・・」


痛みが消えた。

私は深い海に舞い戻っていた。



ふと見ると、ずっと底の方に白い光が見える。

私は吸い寄せられるようにその光の方へと潜っていった。

私は暗闇の中から、その小さな光をのぞき込んだ。



そこには小田くんがいた。

血まみれの私がいた。

そして、あかちゃんに乗り移った哀哉が確かに見えた。



黙って見ているわけにはいかなかった。

赤ちゃんを守りたい一心だった。




私はその小さな光の中へ飛び出した。


 
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