わたしのピンクの錠剤
ドアをそっと開け、法廷に入った。
ちょうど親父が証言台に立っていた。
「だから、あいかなが美智子先生に取り憑いたんです。信じられないでしょうが、間違いないのです」
それを聞いた検察官はあざ笑い、見下すように言った。
「つまり、被告人が被害者を殺したんじゃなくて、あいかなという怨霊が殺したって言いたいわけですね」
「いいえ、あいかなは怨霊じゃありません。私が言いたいのは美智子先生が殺したんじゃないということです。美智子先生は心神喪失状態にあったということです」
「被告人が殺したんじゃなく、被告人に取り憑いた『あいかな』が殺したと、今あなたは証言なさった。
あいかなは怨霊じゃない?そうですか。だったら、何なんでしょう」
「あいかなは、・・・別人格です」
「別人格? 被告人の別人格ですか」
「いえ、別の人物の別人格です。ですが、美智子先生に取り憑いたんです」
「別の人物とは誰でしょう」
「それは、・・わかりません」
「小田さん、本当のことをおっしゃって下さい。せっかくの証言が、ただの絵空事になってしまいますよ」
「む、娘の別人格だったんです」
「娘さんというのは、・・あなたが11年前に誘拐した子供のことですか」
「そ、それは・・・」